2019年3月末をもって大学病院の医局を退局し、4月からフリーランスの内科医となりました。
非常勤で診療は続けつつ、血糖値に関するワークショップを開催するほか、創業したドクターメイトの業務、ブログ運営、医療系執筆、ヘルスケア事業のアドバイザーなど、「医師」の仕事の枠を大きく拡げつつありました。
わたしがどうして、どのように医局を辞め、医師とししての「通常」のキャリアプランを外れ、現在のようなフリーランス生活に至ったのかを綴ります。
目次
なぜフリーランスになるのか
医師のキャリアについて自問する
医局を辞める3年ほど前からフリーランスになることを目論み始めました。
日本の医師としての「自然な」キャリアプランは、
医学部卒業
↓
研修医
↓
専攻医(専門医取得)/博士号
↓
専門性の研鑽/指導医/留学
↓
所属病院or大学病院でのキャリアアップ
または
開業
といった感じでしょう。
私自身、転勤族で育ったせいか、一箇所にとどまることが苦手な性分です。果たして大学の医局員として病院勤務を続けられるかという疑問は、入局間もない頃から抱えていました。
あたらしいキャリアとの出会い
高校時代の同窓が2015年に起業しました。Antaaという医師同士の共助コミュニティアプリの会社です。これを機に、「医師≒病院・クリニックなどで保険診療を行う仕事」というわたしの中の固定概念が消え去り、病院や現在の医療制度の枠組みの外側で働ける可能性を模索し始めました。
既存の医療制度の枠組を越えて、医師が提供できる「何か」を探し始め、とりあえず当ブログ「糖尿病(仮)」が始動します。
ドクターメイト創業へ参画
Antaaのコミュニティで知り合った皮膚科のドクターから、オンラインでの医療相談サービスへの参画に誘われます。
まさに、わたしの考えていた、既存の医療制度の枠組みを越えた医療サービスが形になるような取り組みで、二つ返事で賛同します。
徐々に、病院での診療から、病院外への医療サービスへとわたしの関心と熱量がシフトしていきます。医師としてというよりはむしろ、自分のキャリアとしてやりたいことが明確になりつつあり、1年半をかけて退局へ向けて準備しはじめました。
医局を辞めるために
背景
わたし自身は、出身大学と入局した大学が異なります。いずれ辞めるつもりで入局したわけではありませんが、いま思えば、これも退局時にプラスに作用したかもしれません。
そういう意味では、入局の段階から多様な選択肢を用意しておいて、多様な選択ができる環境を自ら選ぶことも大切なのでしょう。
根回し
2017年12月にドクターメイトが創業し、すこしずつ医局の同僚や親しい先輩に話し始めます。医師以外の「変わったこと」やってるヤツとして徐々に印象を少しずつ、うっすらと匂わせ始めました。
もちろん大学での業務には支障がないように努め、学外での私の活動がネガティブな印象を与えないよう注意をはらいます。SNSなどのつながりも「整理」しました。
タイミング
結果的にタイミングよく、2018年4月付で群馬の関連病院へ出向となります。所属は医局にありますが、事実上、大学からは距離ができ市中病院での勤務医となりました。
正直なところ、この段階で退局する心づもりは決めておりました。出向前の送別会でそれとなく会社のこと、自分のやりたいことを話して異動しました。
出向後は医局と適度な距離感を保ちつつ、いつ医局長と教授へ退局の旨を伝えるべきかタイミングを練りはじめます。
ここからは情報線です。他大学、他科も含めて最近退局した先生の情報をうかがい、いつ、どのように伝えたのか。まず誰にアポを取るのがいいのか。どういう反応をされ、どんなことを言われたか・・・等々、情報収集の上、最善策を練りました。
さらに最後の根回しとして10月の医局旅行で近況報告を兼ねてドクターメイトのこと、ブログのことなどを話し、数名の医局員の先生に、「事業の進捗状況によっては、辞めるかもしれない」と退局の選択肢が浮上していることを伝えました。
アポ取り
2018年10月末、医局運営、医局人事を司る、医局長にメールでアポを取ります。翌年度の人事等を踏まえて、退局の半年前には伝えたほうがよさそうです。
医局長
■■■■ 先生 御机下大変お世話になっております.
ご無沙汰しており申し訳ございません.私事ですが,来年度の進退についてご相談したく存じます.
####中略####
大変ご多用と存じますが,11月ないし12月にお会いできますと幸いです.可能であれば下記の日程のいづれかで,教授ともご面談できますと幸甚です.
11月■日、■日、・・・
12月■日、■日、・・・不躾な内容で大変恐れ入りますが,何卒宜しくお願い申し上げます.
教授の週間スケジュールはだいたい決まっており、あらかじめ教授の外来診療後のタイミングを狙ってアポを依頼しました。(偶然ですが、このタイミングは、他の医局員の先生がたが大学外勤務で不在のタイミングでもありました。)
しかし、一週間返答がありません。定例の医局長と教授との打ち合わせ後に返事が来るかと思っていましたがヨミが外れました。
プランBへ変更し、恐る恐る教授へ直にメールします。
■■■■ 教授 御机下
大変お世話になっております.
不躾にご連絡差し上げるご無礼をお許しください.私事ですが,来年度の進退についてご相談したく存じます.
先生におかれましては大変ご多用と存じますが,先生の外来診療後,下記の日付のいずれかで,小医とご面談いただけますと幸いです.11月■日、■日、・・・
12月■日、■日、・・・何卒宜しくお願い申し上げます.
驚くほどあっさりと、すぐに返信が来ました。やきもきしましたが、第1段階はクリアです。
面談
11月某日、スーツをまとい群馬から大学へ向かいます。医局長へのメールで退局の旨は伝えてあったので、対局しようとする経緯と決心を伝え、了承をいただきました。
もともと人望ある教授で、怖い先生ではなかったですが、筋が通るように、他の先生、病院に迷惑が掛からないようにとだけは諭されました。
とある筋からは、出向から大学に戻らずに退局するのは咎められるとの情報もありましたが、そんなことはなく、「大変でしょうが頑張ってください」と送り出していただきました。
退局
わたしの退局が医局内で周知となり、医局員の先生がたそれぞれの意見があったかとは思いますが、私個人の感覚としては「スムーズに」3月末をもって医局を辞めました。
世間では、引き止めや嫌がらせを受けたりといった噂も耳にしますが、最後まで居心地のいい医局だったと思います。
本当に感謝しています。
まとめ
これまで、医師のキャリアとして、「医局を辞める」という選択肢などなかった時代が長らく続いていました。
近年になって、医局に入らない医師、起業する医師、病院で働かない医師といった、いままでなかった働き方をする医師が増えつつあります。
しかしながら、依然、「医局」というのは医師の成長、教育を担い、医師人材の配分によって地域の医療を支える重要な役割を果たしています。
医局にとどまるのか、辞めるかに正否はなく、選択肢の一つとして私の経験がお役に立てることがあれば幸いです。
診療情報
クリニック ル・ギンザ(銀座有楽町内科)
火・水・金曜日 12:00〜20:00(受付11:30〜19:30)
東京都中央区銀座4丁目1番先 北数寄屋ビルB1F
H.I.S.銀座本店のすぐ隣の扉が入口です。
上大崎クリニック
毎月第1土曜日+不定期
詳細はクリニックホームページをご覧ください。
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