広告

腸管出血性大腸菌O157を診断したら――届出の様式と書き方.感染原因・経路は不詳でも大丈夫です.

ユッケやレバ刺しが規制されて,腸管出血性大腸菌O157を見かけることはだいぶ減りました.しかし,時折食中毒の原因として報道されることも相変わらずです.わたしも今夏,診断しました.

O157を疑う食事内容,嘔吐・下痢などの症状,エコー・CTでの強い腸炎所見などありましたら,便培養検査とともに,ベロ毒素検査も提出します.

外注検査でも数日以内にベロ毒素の陽性,陰性が判明し,陽性なら血清群,ベロ毒素の型が判ります.判明すると,検査室ないし検査会社から電話連絡が来ます.

O157をはじめとする腸管出血性大腸菌は感染症法の「3類感染症」に分類され,診断したら「ただちに届け出る」ことと定められています.

東京都の届出様式はこちらです.届出基準も定められています.

この届出ですが,夜中の外来などで直ぐには検査結果が出ず,「胃腸炎」などの診断で患者さんを帰した後だと,感染経路,感染源との接触の経緯を十分聴取していないことがしばしばです.

でも大丈夫です.とにかくO157が発生したことが行政に伝わることが大事なので,その後の聞き込みや,感染源(飲食店など)の特定は,保健所の管轄でやってくれます.

感染原因・経路・感染地域不詳のまま提出しましょう.後日,保健所から電話がかかってきて,いろいろ訊かれることもありますが,受診時には十分に聴取できなかった旨を伝えれば大丈夫です.感染源が特定されたか否かなどの経緯を教えてくれることもあります.

ちなみに,患者さんにも聞き込みが入ります.感染症法は医師の守秘義務の対象とならないので,患者さんの氏名,現住所,連絡先などが保健所に報告され,この連絡先に保健所から連絡が来ます.

感染源を特定し,更なる感染拡大を防止するためなので,患者さんも医者も保健所の方に全力で協力しましょう.

糖尿病内科的コメント

ふつうの糖尿病外来で嘔吐・下痢をみることは少ないですが,内科外来,内科当直では,嘔吐・下痢は,風邪と並んで2大疾患です.症状に依って,必ずしも便培養やベロ毒素の検査をするわけではありません.

主な治療は,下痢で失った水分を補って安静にすることですので,O157であろうとなかろうと治療方針は変わりませんが,極めて感染力が強く,集団食中毒の原因となるので,素早い届出が大切ですね.

プロフィール

やさしい糖尿病内科医
山村 聡(やまむら そう)

九州生まれ、九州育ち、九州大学医学部卒。大学病院で糖尿病・代謝・内分泌内科助教、市中病院勤務後退局。フリーランスを経て、銀座有楽町内科院長。

病気を治療する医師であると同時に、生涯の健康を保つパートナーでありたいと思っています。

趣味はお酒と血糖値。診察室で患者さんと喋ることも好きですが、気のおけない友人とお酒を飲むことも大好きです。自分の幸せも大切にしながら,社会が豊かになることに貢献できたら最高です.

いつも最後まで読んでいただきありがとうございます.

わたしの詳しいプロフィールはこちら