友人が幹事を務める若手医師イベントUnited Medical Leaders summitに参加してきました.私もどちらかと言うと意識高い系なので居心地がよく,良いつながりができました.医者婚編はこちら.
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人工知能とは何か
東大医学部卒で救急医,株式会社メドレー役員を経て,医業の傍ら情報学研究に従事される沖山翔先生のレクチャーとパネルディスカッションでした.プレゼンテーションスライドが公開されているのでご参照下さい.
先生から人工知能の歴史,仕組み,現時点での実用例が紹介され,ぼんやりしていた人工知能の実像,実情が浮かび上がってきました.
人工知能(AI)というと「機械学習」のイメージですが,そもそも「人工知能(AI)」に定義というものはありません.われわれが主観的に「これは人工知能だ!」と決めており,いわゆる「機械学習」を狭義の人工知能と位置づける場合があるようです.
そして印象的だったのがこちらの動画です.パーキンソン病でtremor(振戦;手の震え)を生じた女性デザイナーのため,AIに震えのバターンを学習させ,その震えを打ち消すような振動でtremorを軽減させるプロジェクトです.
AIというと未来的で,何でもやってくれるドラえもん的な存在をイメージしますが,1人の患者,1つの症状にフォーカスして人工知能が活用されている事例を見ると,普段の診療の周りにもニーズが埋まっているように思います.上手く掘り起こして,このイベントでつながった人たちと仕事ができたらと期待します.
人工知能が医者の仕事を奪うのか
沖山先生のレクチャーに続いて,眼科医でありデジタルハリウッド大学大学院客員教授でもある加藤浩晃先生,整形外科医でありアンター株式会社代表取締役でもある中山俊先生を交えたパネルディスカッションが行われました.
画像診断,手術のアシストなどAIの実用例をあげながら,話題は,医者の仕事がAIに取って代わられるのではないかという未来予想へ.
加藤先生より「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書」(平成29年6月厚労省より公表)が紹介され,わずか4年後の2021年には診断,画像診断,麻酔管理などをAIが「支援」する形で実用化されようとしています.
タッチパネルで問診し,必要な検査が自動でオーダーされ,ロボットが採血し,レントゲンやCTをAIが読影して,診断名のリストが医者のもとに届く時代はそう遠くないようです.
では,医者の仕事がなくなるでしょうか?「診断」という点では,AIに大いに助けられ,鑑別診断をいくつも挙げる必要はなくなるかもしれません.そうして医者の仕事は,患者との調整役,コーディネーターのような役割に変わってくると予想しています.
AIが検査結果と病名に加えて,治療プランも提示してくれるでしょう.それを踏まえて,患者に結果を伝え,わかりやすく説明をし,患者の希望と摺り合わせながら,どんな治療が最適か話し合ってアレンジする.診断が容易になる分,コミュニケーションやコーディネートといった,より人間味のある仕事に重きが置かれてくるのではないかと思います.
糖尿病内科的コメント
糖尿病の診断自体は比較的簡単なので,AIすら必要ないかもしれません.しかし糖尿病治療の選択肢は極めて豊富です.基本の食事療法でも単にカロリー計算するだけでなく,朝ごはんを食べない人,夕食はいつも外食の人,野菜が嫌いな人,何でも3日坊主の人・・・などなど,生活パターン,性格に合わせたアレンジが求められます.加えて,数十種類ある薬を組み合わせ,場合によってはインスリン注射を導入したり,内服薬は毎食後にするのか,朝夕の2回にするのか,はたまた週1回の薬で管理できるのか・・・といったひと工夫が必要です.
そして何より,患者さんの実情,心情,希望を汲んで,ときに優しく,ときに厳しく生活改善を提案するコミュニケーション力が不可欠です.まだまだ私も修行の身ですので,AIには代えられない人間性を磨いている次第です.
次回のUnited Medical Leaders summitは11月,大阪開催予定です.