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つらい便秘について内科医がていねいに解説|市販薬の上手な使い方も紹介します

つらい便秘・・・外来でも,病棟で入院中の患者さんからも相談されます.

慢性便秘症診療ガイドラインをもとに一般の方向けにまとめてみました.

便秘でお困りの方,便秘で困る患者さんをケアする看護師さん,介護士さんのお役に立てると幸いです.

目次

参考文献

慢性便秘症診療ガイドライン2017
日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断治療研究会
南江堂

つらい便秘を少しでも楽にしたい

便秘の定義は?

そもそも「便秘」とは,ガイドラインでは

本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態

と定義しています.

ざっくり言うと,出したい感じがあって,実際に便も溜まってるんだけど,すっきり出てくれない状態ということです.

中でも,6ヶ月以上まえからそういう症状があって,ここ3ヶ月はそういう状態が続いていることを「慢性便秘症」と診断することとなっています.

どれくらいの人が便秘で困っているのか

日本人全体の男性2.6%,女性4.9%に便秘の訴えがあります(平成25年 厚労省 国民生活調査).

年齢を重ねるにつれてその割合は増加し,70歳以上で特に増加します.

80歳以上では男女ともに10人に1人は便秘に困っている現状です.

これは加齢とともに食事,運動量が減ることも一因ですが,腸管の細胞の数が減り,腸管の蠕動運動が低下することも原因と考えられています.

また女性は出産回数の多い人ほど,排便に関わる筋肉の動きが低下しやすいようです.上手に息めなくなることも,すっきり排便できない原因となります.

意外と多い便秘の原因|薬剤性便秘症

高齢になるといろいろな内服薬が必要になってきます.

パーキンソン病のお薬,精神科のお薬,血圧のお薬などが便秘の原因となることがあります.

便秘になるとわかっているお薬を処方する際は,ドクターは便秘薬も一緒に処方するようにしています.

血圧の薬でも,人によって便秘になることがあり,薬を飲み始めて便秘になったのであれば処方医に相談するのがいいでしょう.

われわれ医者も気をつけるようにはしています.治療内容によって必要なお薬であれば,便秘薬を合わせて処方することもありますし,お薬を変更することもあります.

便秘の治療

生活習慣の改善

まずは食事,運動習慣の改善です.

ヨーグルト,乳酸菌飲料,乳酸菌サプリによって腸内細菌叢が改善し,便秘の改善に期待できます.

納豆や発酵食品も腸内細菌叢には良いように思いますが,はっきりしたデータはわかりません.

内服薬

便秘の内服薬は,プロバイオティクス,膨張性下剤,浸透圧性下剤,刺激性下剤,上皮機能変容薬,消化管運動賦活剤,漢方薬に分類されます.

ガイドライン上,エビデンスレベルAで推奨されるのは浸透圧性下剤,上皮機能変容薬,消化管運動賦活剤です.

プロバイオティクス

いわゆる整腸剤です.ビオフェルミン®,ラックビー®,ミヤBM®など.

処方薬でなくても市販薬,乳酸菌サプリ,ヨーグルト,乳酸菌飲料にも整腸作用は期待できますが,必ずしも便秘に有効とは限りません.

膨張性下剤

水と一緒に飲むと腸管内で膨らむタイプの下剤です.コロコロの便や,便量が多くないタイプの便秘で,便形,便量を保って排便を促します.

カルボキシメチルセルロース(バルコーゼ®),ポリカルボフィルカルシウム(コロネル®,ポリフル®)など,一部ダイエット下剤として市販されているものもあります.

浸透圧性下剤

腸管の水分を吸収し,硬い便を柔らかくしてくれるお薬です.

浸透圧性下剤は,酸化マグネシウムが一般的ですが,キシリトールガムをたくさん食べると便がゆるくなるのもこの下剤と同様の作用です.

このタイプのお薬は比較的に安全で,使いやすいお薬です.腸管の水分を集めるだけなので,耐性も出にくく,私の処方数も最も多いです.

刺激性下剤

腸管の水分吸収を抑えて便を柔らかくし,大腸の神経叢を刺激して蠕動→排便を促進します.

センノシド(プルゼニド®),センナ(アローゼン®)などのアントラキノン系と,ビサコジル(コーラック®),ピコスルファート(ラキソベロン®)などのジフェニール系があります.

下剤として市販されるひまし油,コーラックもこのタイプの下剤です.

刺激性下剤は長期連用によって耐性が生じることがあり,出ないときの頓用が望ましいです.

上皮機能変容薬

腸管の上皮に作用して,腸管内に水分分泌を促すお薬です.

ルビプロストン(アミティーザ®),リナクロチド(リンゼス®)があり,どちらも処方箋が必要なお薬です.

消化管運動賦活剤

腸管のセロトニン受容体を刺激して,蠕動運動を促進するお薬です.

日本ではモサプリド(ガスモチン®)があります.

漢方薬

大黄甘草湯,麻子仁丸,大建中湯があります.

これまで紹介したお薬のいろいろな作用を取り混ぜて,排便を促します.

生薬は人によって効果の違いや,副作用の出方が様々ですので慎重に使っています.

ちなみに市販の漢方便秘薬(タケダ,ツムラ,大正など)は大黄甘草湯を主に含んでいます.

坐剤・浣腸

座薬は刺激性下剤のビサコジル(コーラック®,テレミン®)が一般的です.

グリセリン浣腸水分を直接直腸内に送り込み,浸透性下剤としての作用と合わせて排便を促します.

それでもしつこい硬い便が残っているようなら摘便です.硬い栓になっている便を徒手的に除去します.

わたしの処方

まずは水分摂取をしっかり促し,腎機能に問題がなければ酸化マグネシウムから始めることが多いです.

朝夕から始めて3回に増量し,それでもダメならセンノシドを眠前頓用で刺激性下剤への反応を確かめます.

直腸診で硬便が溜まっているようなら,浣腸,摘便を試みます.お腹の動きが悪いようであれば大建中湯を併用します.

ここでまだ便通が滞るようであれば,アミティーザ®,リンゼス®への反応を見ます.

それぞれの薬を導入した段階で反応をみながら,常用にするか頓用にするか,増量するか減量するか検討,調整しています.

年齢,便秘のタイプによって対応が異なるので一般化はできませんが,わたしの処方の一例はこんな感じです.

もし一般の方におすすめするなら・・・

まずは水分摂取と食事の改善からおすすめすることが多いです.

便秘がきっかけで大腸がんや,消化管の病気が見つかることもあります.

市販薬もありますが,一度は医師の診察を受けて処方薬から市販薬に切り替えるのが安心です.

もし,どうしても市販薬から試すのであれば,健診で異常がなく,ほかの内服薬がないことを前提に,マグネシウムを含む浸透圧性下剤から検討します.

それでもダメならコーラック®(刺激性下剤)です.寝る前に1錠から始めます.

刺激性下剤だけでは,お腹の中の便全体が柔らかくなるわけではないので,即効性はありますが効果は一時的です.

先述の通り,耐性も出ますので,浸透圧性下剤→ときどき刺激性下剤で便通をつけて,あわせて整腸剤で腸内環境とを整えつつ,お薬を飲む回数を少しずつ減らしていきます.

(※あくまで一例です.「医師に相談の上」の治療をお奨めします.)

糖尿病内科的コメント

長く糖尿病を患っていると,神経障害の一つとして便秘の訴えはよく聞きます.

「便秘」といっても人によって様々なタイプがありますので,糖尿病と同様,患者さんと対話しながら,その人に合った治療を模索することが大切ですね.

プロフィール

やさしい糖尿病内科医
山村 聡(やまむら そう)

九州生まれ、九州育ち、九州大学医学部卒。大学病院で糖尿病・代謝・内分泌内科助教、市中病院勤務後退局。フリーランスを経て、銀座有楽町内科院長。

病気を治療する医師であると同時に、生涯の健康を保つパートナーでありたいと思っています。

趣味はお酒と血糖値。診察室で患者さんと喋ることも好きですが、気のおけない友人とお酒を飲むことも大好きです。自分の幸せも大切にしながら,社会が豊かになることに貢献できたら最高です.

いつも最後まで読んでいただきありがとうございます.

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