健診で血圧が高いと言われたとき,まず何をしたらいいか糖尿病内科医からの提案です.検診結果に「要精査」「要経過観察」と書かれていると心配になります.どれくらい不健康なのか,すぐ病院に行ったほうがいいのか,その程度や見通しが立つと,幾分気休めになります.
※ただし,血圧が180/120mmHg以上であったり,頭,胸,背中などに痛み,違和感がある,息苦しい,気分が悪いなどの症状があれば,速やかに病院を受診しましょう.
目次
健康診断で血圧が高いと言われたら
高血圧の基準は上(収縮期血圧)が140mmHg以上,下(拡張期血圧)が90mmHg以上です.健康診断でどちらか一方でも超えていると受診を促されます.検診結果をもらって1ヶ月を目安に受診するのが望ましいですが,まずは毎朝の血圧測定と塩分控えめの食事を始めることをオススメします.
毎朝の血圧測定で,自分の普段の血圧を知る
健康診断や診察室での血圧測定は一発勝負で,みなさんやや高めに出ます.順番待ちでイライラしたり,看護師や医者の前で緊張したりします.日常的に血圧測定していない方なら,血圧を測るという行為そのものにドキドキしてしまいます.そこで,まずは自分の普段の血圧がどれくらいなのか知ることが大切です.
血圧計を買う
手首式でも,腕巻き式でも結構です.手首式は心臓の高さに固定して測るのがポイントです.詳しくはこちらで記事にしてみました.
毎朝ルーチンとして血圧を測る
測るタイミングにもポイントがあります.朝起きて,トイレに行って,ご飯を食べる前.このタイミングで測定します.トイレの直後は少し血圧が下がるので,朝食を前に,いただきますの前に測って食事をとるのがおすすめです.
正式には2回測定して平均をとるのがお作法ですが,面倒なので毎日1回測定でも良いと思います.大切なのは毎日続けて記録することです.測定時刻と血圧を手帳やスマホに記録して,医者にかかったときに見せられるようにしておきましょう.
家庭血圧の目安
自宅での血圧測定は健診と違って緊張感も少なく,落ち着いた状態で測定できます.そのため正常値も低めに設定されています.目安は上が135mmHg,下が85mmHgです.毎日測っていて,どちらかが超えるようであれば,早めに病院を受信しましょう.
高血圧の最初の治療は塩分控えめ
血圧測定を始めるのに合わせて,塩分控えめの食事も開始してみましょう.病院に行くのをためらっているあいだに,自分で食事療法にトライしてみて,それでも血圧が下がらないなら受診しようという決心がつきます.
減塩の目安
高血圧の予防,治療のためには1日の塩分量を6g未満にすることが理想的です.現代日本人は平均10g前後の塩分を摂取しており,6gまではいかなくとも,男性8g,女性7g未満を目標に減塩したいところです.ちなみにWHOが提示する減塩目標は5g未満という厳しい基準になっています.
減塩のはじめの一歩
食事にどれくらいの塩分が入っているかは分かりにくいです.いちいち計算して,減塩に取り組むのは面倒で続けられません.いっそのことシンプルに,塩分多めの食品を毎日の食事から無くしてしまいましょう.
カップ麺を食べる習慣があればやめる.なかなか止められないにしても週1回だけの楽しみにする.漬物をやめる.1食にたくあん1枚だけの楽しみにする.カップ麺やたくあんは贅沢品ではないですが,贅沢品のようにたまに食べる楽しみを味わったほうが幸せで健康な生活をおくることができます.
減塩○○に替える
味噌も醤油も減塩味噌,減塩醤油に替えると3〜5割の減塩が可能です.調味料メーカーも健康志向に応えるため,各社減塩製品を製造しているので,使い比べて,自分好みの減塩商品が見つかると思います.
替えてしばらくは味気なく感じますが,1本使い切る頃には慣れてしまいます.外食での醤油が塩辛く感じられれば,減塩生活が当たり前になってきた証です.
調味料を量る習慣でさらに減塩
減塩味噌,減塩醤油があるように,食事の塩分増加の原因は調味料です.塩,醤油,味噌といった日本人の好む味付けは自然と塩分が増加します.
ボトルや容器から目分量で鍋やお皿に書けるのではなく,小さじ,大さじで測る習慣をつけると,自然と減塩につながります.冷奴に醤油をかけるのも,小さじ1杯しっかり量ります.醤油小さじ1杯で食塩1g,減塩醤油なら0.5gの減塩になります.いつもの醤油を見える化すると,意外と多くの塩分を摂っていることに意識が向かいます.
量るのはどうしても面倒!というかたは,スプレー式の醤油を使って,1品につき原則1プッシュに決めてしまいましょう.
いろいろ試して血圧135/85以上なら病院受診
血圧測定も,減塩も,胡麻麦茶や青汁なんかも試して,自宅で毎朝測る血圧が135/85mmHgを超えるようであれば病院を受診しましょう.食事や加齢だけではない,ホルモンの異常や血管の異常が高血圧の原因となっている可能性もあります.
このとき,ふだん測っていた家庭血圧が参考になります.通常なら,最初の外来で指示されるのが,血圧測定と減塩指導なので,ほかの「はじめての高血圧」患者さんをリードして,時間を節約して,必要な検査に進むことができます.
何科を受診するか
普通の内科のクリニックで良いと思います.小さいクリニックでも,ホームページで何科出身のドクターが開業しているか確認すると受診の参考になります.わたしが高血圧と言われたら,循環器内科,糖尿病内科,内分泌内科,腎臓内科など高血圧を専門とする科出身の医師を受診して,栄養士さんに食事の相談ができる病院ならなお受診意欲が湧きます.
あらためて栄養士さんと塩分について相談する
これまでの自己流の減塩生活を,栄養士さんに相談してみます.意外なところに塩分摂取が隠れていたり,さらなる減塩の工夫,味気なくならない味付けの工夫を教えてくれます.栄養士さんは料理上手でもあるので,減塩の相談というよりは,美味しい味付けの相談に行くつもりでいろいろ質問してみましょう.
飲み薬を始めてみる
いろいろやって,ホルモンの異常も調べつつ,なお血圧が高いようであれば,高血圧のお薬を飲み始めることになります.多くの人にとって,初めての常用薬が高血圧の薬になることが多いので,毎日飲むことに抵抗がある方もいますが,50代の日本人の半数以上が高血圧症といわれています.同世代のおよそ半数が飲むことになる薬を飲み始めて,血圧をいい値に保ち,心筋梗塞や脳梗塞の危険を下げることができれば御の字だとわたしは思いますが,いかがでしょう.
まとめ
はじめて高血圧といわれるところから,自分でトライできること,病院を受診してからどういう流れになるのかをご紹介しました.病院に行くといきなり薬を出されるのではないか,血圧が高いと怒られるのではないか,といった心配は無用です.
もちろん,健診で異常を言われたら,結果を受け取ったその足で受診されても結構です.外来でお待ちしています.